Shure MV51は自宅録音やビデオチャット用マイクに最適だと思う

プロからアマチュアまで広く使われているあのSM58(ゴッパー)を作ったShure MV51というデジタルマイクを買ってみました。

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きっかけは、このコロナ禍にあって演奏家の方から「どんなマイクを買ったら良い?」とたくさんの方から相談されたからでした。多くの人が持っているであろうiPhoneとケーブル1本繋ぐだけで、そこそこ使える素材を録れる物を探していたら、これ以外ありえないというほどぴったりで価格も手頃な物がShure MV51でした。

そこで、実際に購入して、PCを使わず、iPhoneとこのShure MV51だけを使って、インスト音源の受け取りから、録音、納品データの転送ができるかを、自分でも検証してみることにしました。

結果的に、Steinberg Cubasis(CubaseのiOS版)を使うことで解決できました。もちろん高価なコンデンサーマイクで録られた音には敵いませんが、それでもギリギリ使えるかも知れない素材は録れると思います。

コンセントに電源アダプターなどを差すこともなく、完全にポータブルな環境で、どこでも、そこそこの音質で録れるのはある意味、他の機材では真似できない価値があるかもしれません。

嬉しい誤算だったのですが、MacとWindowsでも使用できるのが、ビデオチャットでの会議用マイクとして理想的でした。指向性も程々に鋭すぎず、広すぎず。スピーチモードに設定すると、最適なEQとコンプレッサーをかけてくれるので、相手とのコミュニケーションもスムーズになります。

YoutuberやVtuberの方にとっても使いでがありそうです、

また、イヤホン端子がついていて、Lightning経由で再生音を聞くことができるので、Lightning to ステレオミニのアダプターの代わりにもなります。

思ったより多用途なので、歌や声の自宅録音を気軽に始めたい方にはとてもオススメできます。このマイクをきっかけに一人でも音での表現を始める方が増えたら素敵だなあと思いました。






「ハードウェアシンセらしさ」とは何かについての考察と検証

細かくて伝わりづらいけど、分かる人にはすごく分かる(はずの)考察と検証をしてみました。汎用のコンピューターを使って音楽を作る人には興味深いものだと思いますので、ぜひ読んで頂き、ご意見いただければと思います。

さて、表題にもあります「ハードウェアシンセらしさとは何か」を考えるきっかけは、名作シンセサイザーKorg Tritonのハードウェアとソフトウェア版の音色の比較・検証記事でした。

リンク先の検証記事内リンクにある比較音源は以下の2つです。

僕はこの2つを聴いて①がハードウェアと予想。正解しました。そして②が妙に滲んでいて良くも悪くもまとまって「和音なのに1ボイスの音っぽいな」という感想を持ちました。

アンケート方式だったので大変話題になったようです。これについて言及されているツイートで引っかかるものを見つけました(否定するものではありません)。

DACじゃなくてその後のプリアンプだと思うんだけどなぁ。DACなんて所詮ありきたりのもの使ってるし

via https://twitter.com/f_moriya/status/1220312938310860801

この方がおっしゃるようにソフトウェアにあってハードウェアにある部分はここなのだと思いますしサウンドに影響を与えていることは間違いないと思うのです。

ですが、素の音であるはずのソフトウェア版の音が滲んでいて、ハードウェア版がクリアであるということに違和感を覚えました。なぜなら、ソフトウェアの音をなんらかのDAなりアンプなりを通した上でもう一度ADしてデータに戻したら、ハードウェアシンセのようにクリアになるはずだからです。もともと滲んでいる音が何かのプロセスでクリアになるというのは経験的に想像が出来ませんでした。

そこで立てた仮説はこうです。

「ハードウェアシンセは物理的にモノフォニックのボイスが独立していて、ミックスされたものがDAとアンプを通して音になっているはずだ」

「ソフトウェアの音のにじみはプラグイン内のミキサーの問題ではないか」

そこで、わざと濁りやすい和音と音色のMIDIデータを用意し、そのまま再生した場合と、和音をモノフォニックになるよう分割し、全く同じ設定の、しかも最大発音数と同数のソフトウェア音源を立ち上げて鳴らして、擬似的にハードウェア音源内にあるであろうミキサーをDAW上で再現してみました。

テキストで書くと分かりにくいと思うので、動画を作成しました。

試聴する環境によってはほとんど違いがないと感じるかも知れません。ですが、大きなスピーカーやヘッドホンで聴くと間違いなく音が違う。僕は濁りが若干解消されたように感じました。何人かの方に上記動画を聴いてもらい感想をいだだきましたが、音の差はあり、よりハードウェア的な音になるとおっしゃる方もいました。

もちろん先程引用したツイートにある通り、ハードとソフトの音の違いにDAやアンプが関わっていることは間違いないと思うのですが、どうやらそれだけではないようです。同じソフトウェアであるDAW内ミキサーを通すだけでも差がでるので、「ハードウェアシンセらしさ」に関わる要素としてミキサーの違いが影響する可能性は高いと考えます。

この結果は実用的なテクニックにも応用できそうです。作業的にはかなり面倒にはなりますが、音の濁りが気になったら和音を分割してモノフォニックでソフトシンセを立ち上げそれぞれ書き出せば、よりクリアな音にできるかも知れません。ただ、その濁や音源内のエフェクトも含めて出音を気に入るかどうかによるので、あくまで気になったら使えるテクニックというだけにはなると思います。


今回はあくまで仮説を立てソフトウェア上で擬似的に検証しただけです。ハードウェアシンセのシグナルフローを実物のパーツや機材を使って再現すれば、ソフトシンセがハードウェアシンセのようになる可能性もありますが、僕はソフトウェアシンセの良さ、ソフトウェアシンセにしか出せない音もあると思っているので、今の所そこまではしないと決めました。それこそ和音や音色を精査することで濁りやにじみといったものは解消される場合もありますしね。

この記事と動画をみてご意見ご感想などあればぜひお願いします。いい音作りましょう!




ナカシマ的2018年の買って良かったオーディオプラグイン

作曲家という仕事柄、監督やクライアントさんに聞いてもらうためのデモをなるべく迅速に、かつちゃんと伝わるように作らなければならないのですが、時短のために様々なソフトを使います。

一時期は専業のミキシングエンジニアさんの真似事をするような実際の機材を模したプラグインエフェクトをよく買っていましたが、選択肢が多くなりすぎてむしろ仕事の判断力を落とす要因になってるような気がしていたので、なるべく使うツールを限定しようと心がけています。

そんな中、革新的な性能やコンセプトのプラグインが、何故か2018年に入ってから続々とリリースされたので、予想外の出費が続いております。嬉しい悲鳴ですね。

良い道具を作ってくれる開発者の方々を応援する意味でも、2018年ナカシマ的「買ってよかったプラグイン」を簡単にご紹介します。


Soundtheory Gullfoss

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エフェクトの種類としてはフルオートダイナミックEQということなんだと思います。とはいえAttackやReleaseといった時間的な挙動を制御するようなパラメーターは一切なく、RECOVERとTAMEという微妙にわかりにくいパラメーターがメインで、それをいい感じになるようポイントを探っているとどんな音源でも大体整った印象にしてしまう魔法のようなエフェクトです。

ほんとこれをデモで試したときの衝撃はすごかったです。生き物みたいにウニョウニョと動くEQカーブの印象とは違って、出音には嘘臭さがほとんどない。iZotopeのNeutronは機械学習から導かれたアルゴリズムで複雑なパラメーターを自動で設定してくれるものですが、このGullfossは開発者いわく「we are not following machine learning trend.」とのこと。解析のために待つこともありません。

じゃあ全チャンネル使えばいいじゃないかという気分に最初はなりますが、それはそれで全部が均一に整えられてしまうと実につまらない。僕はある程度アレンジが終わった曲のマスターに挿して軽く調整するような使い方で愛用しています。あとは、微妙な癖がある音源でどうしても正解が見つからない時にとりあえずかけてみたりします。

だいたいそういう時は耳が疲れていて自分の耳が信用できない状態でもありますから、自然な感じで整えてくれるツールはとりあえずデモを提出するときなんかにとても頼りにしています。

断言します。マストバイです。

https://www.soundtheory.com/home


A.O.M. Sakura Dither

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正直なところ、Ditherの原理はそれなりに理解していたつもりですが、今まではDAWの内部のディザリングアルゴリズムに任せていました。

もっと正直に言えば、このSakura Ditherでさえ最初使ってみた時は効果がよく分からなかったくらいDitherというのは効果が分かりづらいものなんだなと・・・。

DAWのディザーやいろんなマスタリング系リミッターに入っているDitherアルゴリズムなどと厳密に比較試聴していった結果、このSakura Ditherが16bitに書き出した時の音が自然だったので、常に使うようにしています。

個人的な感想としては、0dB付近での音のアタックの微弱な不自然さが薄まるような気がします。とにかく微妙な差です。

書き出し時の最終段に刺すだけで良く、手軽で少し良くなる(これは主観であり好みではありますが)のならば、使わないより使った方がいいなと。今回は「10クリック以内で効果が出るもの」というテーマですので、まさにあてはまるプラグインですね。今の所出動率100%です。

あまり細かいことは気にならない方にはマストバイとまでは言い切れないですけど、書き出すと妙に印象変わって、しかもその結果が気に入らないなあと思った方は試してみてはいかがでしょうか? 

https://aom-factory.jp/ja/products/sakura-dither/


Softube - Weiss MM-1

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これまたとんでもないものが出てきちゃいました。元になった実機であるところのWeiss DS1-MK3はこのプラグインで初めてその存在を知りましたが、100万円近くするとても高価なマスタリング用機材なのですね。

このMM-1はDS1-MK3のアルゴリズムを元にパラメーターなどを絞りつつ、Styleプリセットで挙動を選んでノブを少しいじればかなり自然にレベルを稼ぐことが出来ます。

公式の発表ではコードベースの移植であり、エミュレーションではないというのがデジタルプロセッサーのプラグイン化ならではといったところでしょうか。

このMM-1が出るまでは、Tokyo Dawn LabsのTDR Limiter 6 GEを使ってマスターの音圧調整をしていました。TDR Limiter 6 GE内のバスコンプをパラレルで使ってアタックを残しつつレベルの底上げをしながら、強い高域成分を内部ディエッサーでほんのり叩きつつ全体をリミッターで叩くという処理が一つのプラグイン内で出来るので重宝していました・・・が、そうした処理をもっと簡単操作でできてしまうのがこのMM-1なのです。プリセットを選んでノブをちょちょっと回すだけでなんだかいい感じにできてしまう。フルバージョンであるSoftube版DS1-MK3も細かくいろいろ出来てきっと良いのでしょうが、とにかくいい感じにすばやく仕上げられるツールが欲しいと思っていた僕にはまさにこれというプラグインを出してくれました。ありがとうSoftube!

https://www.mi7.co.jp/products/softube/weissmm1/


Leapwing Audio DYNONE

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マルチバンドコンプの中ではおそらく最強の音質と最高の負荷。クロスオーバー固定ではあるけれど、自然な動作。困ったらマスターにさしてDYNONEで調整すればそこそこいい感じになってしまうほぼ魔法。魔法なので使いすぎには注意です。

最初からパラレルでの使用を前提とした設計。リンクボタンを使って各バンドのスレッショルドなどを同時に変更できる。ある程度バランスよく叩いたら、各バンドのフェーダー(ドライ)を上げて行き、うっすら原音のアタックを追加していくことで音圧感ありつつ、コンプ感の少ない音に仕上げて行くことができます。

設定でLow LatencyかUltra Qualityを選ぶことができますが、Low Latencyでもなかなかの負荷。ミックス時はバッファーサイズを多めに取ってマスターバス専用としてつかうことが多いです。

https://www.leapwingaudio.com/dynone/


Sound Radix POWAIR

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リリースは2017年ですが、今年購入し、稼働率がとても高かったのでご紹介。

どんな音源でも指定のラウドネスに揃えてしまうオートレベラー。お世辞にも音楽的とは言えないが、定期的にやっているラジオ音源の編集やMAのナレーション処理にかなり使い倒しました。

レベラーとコンプレッサーの二段構えになっていて、主にレベラーを使うことになります。ターゲットとなるラウドネスを指定したあと、ゲインレンジでどのくらいの幅で補正するかを設定できます。背景ノイズまでゲインアップしてしまわないためにノイズフロアも設定することもできます。

音楽のミックスには不要だと思いますがポスプロ系時短ツールですね。時は金なり。ひょっとしたらインタビュー収録などをされる映像クリエイターさんとかに重宝されるかも知れません。

https://www.soundradix.com/products/powair/


LiquidSonics Illusion

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さらっとした印象のIR式リバーブ。アルゴリズミックリバーブではしっくりこないことが多かった短いテールのルーム系プリセットが自然で素晴らしい。依然として僕のリバーブのファーストチョイスはNimbusですが、しっくり来ない時は2つ目の選択肢として稼働中。

Hall系からPlate系まで様々なプリセットが用意されていますが、どれも共通したカラーがあり、緻密過ぎず、リアル過ぎず、荒過ぎず。とてもバランスが取れていて、使いやすいと思います。

https://www.liquidsonics.com/product/illusion/


Balance Analog Magpha EQ plugin

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あえてパラメーターやカーブが見えないことで、様々なことを発見できたEQ。ハイシェルフが嫌味じゃないし、切れ味も悪くない。マスタリング用みたいですが負荷はとても軽く、ミックスにも十分使えると思います。

限りなくミニマムなGUIですが、設定によってはノブの指す方向すら見えなくすることも可能(!)。カーブが見えずリッチなUIもないからこそ、見ないことで音への客観性を保ったまま耳で作業を進めるというのは、性能や音質以上の価値があるなと思いました。

http://www.balancemastering.com/plugins/balance-analog-magpha-eq-plugin/


まとめ

いかがでしたでしょうか。まずはデモ版などで試してみて欲しいです。

本当に今年は当たり年! まだまだソフトウェアエフェクトには伸び代やブレイクスルーがあるんだなあと感動してしまいます。

もしこのブログを楽しんで頂けたら、ぜひこの記事をシェアして下さい。少しでも開発者の応援になればと思っております。

みんなで良い音作りましょう!




デジタルEQの良し悪しを「主観的に」比較してみる

今回はちょっと変わった検証をしてみました。よくEQとかコンプなどの比較をする場合、数値を極力ほぼ同一にして効き方をチェックしたりすると思うのですが、そもそもその数値も合ってるとは限らないし、見えないところで別の処理していることもあったりで、果たして同一のパラメーターでの比較って意味があるのかな・・・と思っていたわけですが、逆に超主観的に、同じなが~いミックス作業をプラグインを1つだけ変えてアウトプットを比較しようというのが今回のチャレンジです。




映像に音楽を付けるときに役に立つSwitch(動画変換ソフト)

映像はまだ弱いけどバリバリ劇伴・CM音楽制作で使いまくってる我が愛DAW Studio Oneに最適なソフトがあったのでご報告です。

以下、分かる方向けの文章なので、興味の有る方以外はスルーして頂ければと・・・。(※技術系の記事興味ないわいという方はナカシマが音楽を担当したこの映像で癒やされてくださいませ!)